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書籍・雑誌

2019.05.04

一九八四年[新訳版]

Apple Computerの"1984"コマーシャルの蘊蓄を語りさえするくせに、実は"1984"読んでませんでした…。
ただ訳者あとがきによると、本書は英国での「読んだふり本」第一位なのだとかで何となく救われた(笑)

あらすじのようなものはすでによく知っていたこともあって、今さらと思っていたのだが、読んでみると思っていたものと全く違っていて衝撃的だった。これが1949年に書かれたというのも驚き。

以下、ネタバレあり。

ビッグ・ブラザーによる高度な(今になってほぼ同じことができるようになってしまってるが)盗聴システムに支配されたディストピア、という認識は違っていなかった。
ただもっとソフトな洗脳のようなものと思っていたが、これが全然違った。
画一化、洗脳の徹底ぶりを詳細に描くために、現代の我々に近い価値観を持つ主人公ウィンストンが最終的に完全に洗脳されるまでの物語が展開する。
途中で希望が見えたり、また激しい拷問に屈服しつつもジュリアへの愛情やビッグ・ブラザーへの憎悪を最後まで持ち続けた、という小さな勝利をほのめかしたりはするのだが、それらが完膚なきまでに残酷な方法で粉砕される様子は本当に怖かった。

党が権力を求めるのはひたすら権力のために他ならない、反逆者を殉教者としない
・権力の力に無理やり従わされたという事実すら消し去る、という党の徹底ぶりも狂っている。

AppleのCMはあくまでモチーフとして"1984"を引用しただけとも言えるし、皮肉なことにプライバシー重視を強調している今こそ"1984"を使うにはぴったりの状況なのかもしれない。

2019.04.27

平野 啓一郎「マチネの終わりに」

kindleストアでセールの時に買って、そのままになってた。

 

以下、ネタバレあり。

 

中盤まで、意外にもすれ違い系の恋愛小説なのか?と、イライラ(何で、そこですれ違う?と)しながら読み進んだが、終盤は切ない気持ちと、そこから蒔野のギタリストとしての再生や、自身の人生を取り戻していく洋子を通して幸福感があって、とても良い読後感だった。

 

メインのストーリーに絡んで、人間の感覚の繊細さ(未来が過去を変える、現代人は常に五感を喧騒に揉みしだかれながら疲労している)、グローバル資本主義のシステムへの疑問(人間の不確定性を出来るだけ縮減、人間が自分で考えて行動しなくても良いような自動化)、それに東日本大震災などが織り込まれていて、今の我々を取り巻く状況を自分でも改めて考えるきっかけになった。

 

読んでいる途中で、映画化されることを知ったが、クラシックギターの部分がどんな感じになるのかが気になる。

2019.04.22

鴻上尚史「不死身の特攻兵」

自分ではおそらく読まない本だったと思う。たまたまプレゼントに当選したのだった。

とにかく、読んでいてやりきれない気持ちになる。amazonのレビューを読んで、また違う意味でやりきれない気持ちになる。
真実がどうであったか、正確に追うことは難しいだろうし、感情的に色々な感想があるだろう。
けれど、これが正しいこととは到底言えないことくらいは最低限共有できないのだろうか?

その上で、なぜこのようなことが起こったのか、また同じ状況になったときにどうするのか?ということを考えていかない限り何の進歩もない。

2019.04.20

町田康「ギケイキ 千年の流転」

まだ序盤ということもあってか、「告白」「パンク侍」の異様なまでのテンションには至ってない。ただ期待はしてる。

笑ったところは、以下のところで使われている「骨、折れちゃって」というネタがさりげなく後でまた出てきたところ。細かいけど。

調子のいいときは、なにかというと、チームの一員として、とか、チーム一丸となって、とか言うくせに、ちょっとおかしくなるとメールの返信すらなくなり、電話にも出ない。やっと連絡がついたと思ったら、「あ、ごめん。その日、ちょっと都合悪いんだ」とか、「骨、折れちゃって」とかなんか言って来ないで、次の就職先を探している。

2019.04.14

歴史関連の本

高校時代は地理を選択していたこともあり、自分があまりに歴史に疎いことに気づくことが最近あり、とりあえず日本の近代史と中国の歴史の本を読んだ。

「日本近代史」の方は、ざっくり知っている大きな流れも、結局のところ今と同じような政治勢力のバランスによってしか決められない局面ごとの選択や結果が積み重なって出来上がったものだということがよくわかった。
他の本で読んでも感じたことだが、無謀な戦争への道やその後の戦略についても、誰かが決めたというよりもむしろ色々な考え方を中途半端に取り込んだため、それらの組み合わせが最悪のものになってしまった。これは現在の政治全体の状況とあまり違っていないと思え、心配になる。

「中国文明の歴史」は本当に知らないことばかりで、おもしろかった。ただあまりに多くのことが凝縮して書かれているので、一度読んだだけで全てを理解することはできなかった。
東南アジアや中東、ヨーロッパまでを巻き込み混ざり合った歴史や文化の流れを辿るのはとても興味深く、また別な本も読んでみたくなった。

2019.03.22

「マウンドに散った天才投手」

伊藤智仁の本がすごく良かったので、以前から気になってたこちらも読んでみた。


やはりスワローズファンが1冊まるごと書いた本の濃さと熱さには全く及ばない。
それでも各投手の、故障によってキャリアを絶たれることの辛さや、もう一度野球をしたいという想いの強さは、十分伝わってくる。

2019.03.18

「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」

OKRのことは、何かで読んだこともあって知っているつもりだったけど、今ひとつ良さがわかってなかった。

本書では、前半がストーリーになっていて、これがおもしろい。色々とわかりすぎるストーリーを楽しみながら、OKRがどう働くのかがよく理解できる。

OKRにはバリエーションがあって、解説では元Googleの及川卓也氏がGoogleではまた違うと書いている。本書の方法は、人を鼓舞するようなOを掲げて、達成できる可能性が五分五分のKRの値を設定することで、ただの達成目標ではなくこれに取り組むことで皆が成長するものにする、という点が、すごく良さそう。

朝ベッドから飛び起きてやる気が湧いてくれば、いいOを設定できているということだ。もしかしたら達成できないのではないか、と少し心配になれば、適切なKRだと言える。

毎週金曜日のウィン・セッションも楽しそう。あとは実際に仕事で試してみたい(いろいろ難しいものはあるけど)。

2019.03.16

向田邦子「隣の女」

小学校の頃テレビでみた「あ・うん」は、テレビドラマがおもしろいと思うきっかけになった作品だったと記憶している。
父親役は笠智衆だったかなと思ってたら、今調べたら志村喬だったとは!

本も一度読んでみたいと思いながらなかなか機会がなったところ、kindleストアでセール対象になっているのを見つけた。

やはりこの人の家族の描き方の細かさは独特な気がした(家族ドラマが多かった当時の傾向なのかもしれないが)。またモデルがあるのか、同じような関係性の父親がよく出てくる。
前半、悲しくて泣きそうな話が多くて読んでて落ち込んだが、後半にかけて明るい話も出てきて、最後の「春が来た」も安心して読める展開だったのだが…。

また他の作品も読んでみたいと思ったが、落ち込んでいるときはやめとこう。

2019.03.06

「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階」

ここまで来たら、やはり3も読んでおかないとということで。

シリーズを通して言っていることは一貫していて、結局のところ「人」がすべてであって、適切なリーダーを始めとして正しい人をバスに乗せて、自分たちがやるべきことに集中して弾み車を愚直に回し続ける、そしてそれらを仕組みにしていく(「時計をつくる」)こと。

本書に書かれた「衰退の五段階」というのも、急成長にこだわって重要なポストに適切な人材を配置できなくなったり、危機に瀕してこの原則から外れるようなことをやって一気に転落してしまったり、そもそもそのようなことにならないリーダーを育成することに失敗していたり、という内容である。

繰り返しとは言え、読むたびにハッとさせられるし、思い当たることだらけ。今回は以下の部分が特に心に響いた。

「当社が消えたとき、世界は何を失い、どういう点で悪くなるのだろうか」という問いに対して、説得力のある答えがだせないのであれば、屈服がおそらく賢明な道だろう。しかし、強固な基本的価値観に基づいて、明確で優れた目的をもっているのであれば、戦いを続け、衰退への動きを反転させ、偉大さの復活を目指すのが名誉ある道なのかもしれない。

2019.02.24

「幸運な男 ― 伊藤智仁 悲運のエースの幸福な人生」

伊藤智仁は本当に大好きな投手で、多分スワローズファンでなくとも大好きになっていたと思う。本書の中でも、何人かの選手が伊藤智仁の投げる姿がかっこいいと言っているが、独特の腕のしなりから投げ込まれるきれいなストレートに、エグい高速スライダーはずっと見ていたいものだった。

故障に苦しんだこともよく知っているし、あの引退試合で投じた球に当時、ものすごくショックを受けたこともよく覚えている。また故障が癒えれば投げられることを前提に、スワローズのコーチになっているのでは、という話も当時から言われていたし、僕も割と最近まで本気で期待していた。神宮球場でブルペンで投げる投手の横にいる姿を見ても、まだ現役選手のようにも見えたし。

伊藤智仁については、普通に知り得る情報は全部知っているつもりで、本書も別に読まなくても…と思いながら手に取ったのだが、自分が全くの無知だったことに気付かされた。

リハビリがこれほど過酷なものだったこと、本書での伊藤智仁の言葉や古田氏が評する「執着する潔さ」といった人間的な魅力など、知らなかったことが多かった。再発や経験した痛みへの怖さから、以前のように投げられなくなることやそれを乗り越える苦しみは、テレビを見ているだけでは伝わってこない。松坂大輔が投げられるようになるまであれほどの時間を要したのも、よく理解できた。

引退試合でのピッチングについて、伊藤智仁とともにリハビリに励んだ松谷投手の言葉には、会社の昼休みに読んでいたのに泣いてしまった…。

「あの頃のトモさんは、若手よりもずっと練習していたんですよ。朝早く起きて、誰よりも早くグラウンドでひたすら走って……。それが、あんなボールしか投げられないんですよ、あんな球しか投げられないんですよ。中学生よりも遅いボールなんですよ……。それでも、トモさんはマウンドに立ちたかった。僕からしたら、見ていられないボールです。それでも、トモさんは堂々とマウンドに立っている。そのプロ意識はすごいですよ。」

ただ何より驚いたのがその後の伊藤智仁の言葉。なんと全球ナックルを投げてたなんて!これも知らなかったのだが、体が完全に元に戻らない前提で、ナックルボーラーを目指していたのだった。
本人は世間から向けられる「悲運の投手」というイメージは勝手に思ってくれてむしろラッキーだと捉えていて、タイトルの「幸運な男」を提案されて以下のように言う。この言葉には読んでいて救われる思いだった。
「いいんじゃないですか。確かに、《幸運な男》だと思うから(笑)」「なるほどね、《幸運な男》か。なるほどね…」

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