書籍・雑誌

2018.01.02

アイザック・アシモフ「夜来たる」

表題作も面白かったが、結末でクスッとさせられる「緑の斑点」や、不気味な余韻を残す「ホステス」もよかった。

2017.12.16

「清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実」

ひねくれた当時最弱のスワローズファンの高校生だったので、PL学園、中でも同い年のKKコンビは大嫌いだった。
PL学園を倒してくれそうな学校をとにかく応援してたし、取手二や伊野商がPLに勝った試合は今でもよく憶えている。

しかし桑田が巨人へ、そして巨人を熱望していた清原が西武に行ってからは、清原の方だけは応援していた(FAで巨人に行ってからは除く(笑))。入団一年目で31本塁打を打ったのには驚いたし、野村スワローズとの最初の日本シリーズ対戦で、荒木大輔から打ったホームランの凄さもよく憶えている(今見ると少し甘いとも思えるけど、外角の変化球をあんな簡単にホームランにするとは:ただ清原はこのシリーズではそれ以降あまり活躍してない)。

そんな清原が甲子園で打った13本のホームラン。それぞれ打たれた投手を30年後に取材したのがこの本だ。

長い年月を経ているので美化したり大袈裟になっているところもあるとは思うけど、それにしても、打たれた投手が皆驚く清原のスイングスピード(打たないと思ったら突然バットが出てきて…)と強運(なぜか甘いところに行ったり変化球が落ちなかったり)には、やはりそういうものなのかと感心した。

一方で、気さくに他校の選手と打ち解ける普通の高校生らしさとのギャップも面白い(桑田の変人じみたエピソードもすごいけど)。

そして、打たれた投手、また登板できなかった投手たちのその後も波乱万丈なものが多い。甲子園のマウンドに立つなんて、それだけでかなり特別な経験だし、そこに来るまでに犠牲にしたものが大きかったのか、彼らもまたある意味「特別」なのか。一度追跡調査して統計取ってみると本当に高校野球が教育に役立っているのか評価できるかも。

読んでて、ジーンとするところもあって、こんな気持ちにさせるプロ野球選手なんてそんなにはいないと改めて思う。何らかの形で野球に戻ってきてほしい。

2017.11.23

「ジョナサン・アイブ」

Apple贔屓としては当然、ジョニー・アイブってすごいらしいやん、と知ってはいたけど、こんなにすごい奴だったとは知らなかった。
確かにiPhoneやMacBook Airなどのビデオで製造工程のイノベーションを語っていたけど、実際に深くそこまで関わっていたとは思ってなかった。

昔仕事で、Appleみたいなデザイン志向の製品開発プロセスをやりたいデザイン部門と相当に緊張関係があったことを思い出した(本書に出てくるジョン・ルビンシュタインやスコット・フォーストール側だった)。
もちろんそうすることの重要さまでは理解できるものの、ジョブズのような人が社内にいるのか?という疑問が最後まで消えなかったのだった。しかも最後は「偉い人」の一言でとんでもないものになることもあったし…。

最近はどんな感じになっているのだろうか?

2017.11.06

村上春樹「ロング・グッドバイ」

「長いお別れ」は12年ほど前に読んでから、何度か読み返していたが、この新訳版を読んでもほとんど違いがわからなかった。あまり細部まで読み込んでいなかったのだろうか…。
逆に言えば雰囲気は旧訳版とほぼ同じで、やはりこの雰囲気とストーリーが好きな作品だということは再認識できた。後述する村上春樹自身による解説を読んで納得したけど、フィリップ・マーロウだけの魅力ではなく、ロスの街の描写に込められた愛着のようなものも魅力がある。

本書の一番の読みどころは訳者村上春樹による解説で、これが熱い。村上春樹の本なんてそんなに読んでないけど、これほど熱く語っているのが意外で、楽しく読めた。

2017.11.04

城山三郎「官僚たちの夏」

まずまずおもしろかっったけど、やはり「落日燃ゆ」と同じイライラが募ってしまった。「雑だ」ということを美学のように押し出して、細かいことにこだわらないのはいいが、結局それが自分の理想の実現の妨げになってしまう。

本人はそれで良いかもしれないが、部下など周囲の支持者が気の毒すぎる、と書いていて、身につまされるところがあるのが読んでいて辛かったのかも。

2017.09.02

「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」

書いてあること自体は、関連する業界にいる立場からすると目新しいことはない。けど、この手の本はたまに読んで気分を高揚させないと。

最終章はまさに、そういった高揚感を味あわせてくれた(以下、引用)。

われわれは、すべての人類とすべてのマシンがしっかりと結び付いた地球規模のマトリックスに向かって容赦なく進んでいる。このマトリックスは、われわれが作ったものというよりプロセスそのものだ。われわれの新しい超ネットワークは途切れることのない変化の波であり、われわれの需要や欲望を新しく組み替えては絶えず前へと溢れていく。今後30年の間にわれわれを取り巻く個別のプロダクトやブランド、会社については完全に予想不能だ。
つまり、より流れていき、よりシェアしていき、よりトラッキングし、よりアクセスし、よりインタラクションし、よりスクリーンで読み、よりリミックスし、よりフィルタリングし、よりコグニファイし、より質問し、よりなっていく。われわれは〈始まっていく〉そのとば口にいるのだ。


2017.07.30

「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気

小学から中学の頃にかけて、テレビでよくみてた「宇宙戦艦ヤマト」。そのくらいの歳でも、作品が回を重ねるたびに迷走していることは感じてたが、裏側がこんなだったとは全く想像できない。

ただ本書がすごいのは、その裏側に関心を持って読み始めたにも関わらず、最終的にはヤマト制作の裏側自体はどうでもよくなり、ヤマトはこの西崎義展という人物の破天荒な一生がフィクションでないことを実感するための材料に成り下がるところだ。

総合プロデューサーとして、自分で集めた金を使って、作品=自分自身を世に認めさせるものにするために何でもやるという生き方(きれいごとではなく、法を破ること、他人の人生を狂わせることも厭わない)は、まさに狂気という言葉しかない。
経営者目線で現場に介入してくる厄介な人物というと、スティーブ・ジョブズなんかにも通じるところはありそうだけど、こちらの方がタチは悪い。

それでも、読後はどこか爽やかになって元気が湧いてくるという、怪書だった。

2017.07.09

「大乗仏教 こうしてブッダの教えは変容した」

一般教養として、単純な興味から読んでみたのだが、思った以上におもしろかった。

よりハードルを低く、万人ウケする方向へ変容した宗派が、結果として多くの信者を獲得して生き残ってきた様子がよくわかる。

「よりスピーディーに悟りを開ける方向」という表現がツボで、エンターテインメントの世界に通じるものだ。
楽しさを得るまでのコストが低いものが一般には受け入れられ、それが競争の軸になって行く。もともとの教えに含まれていた輪廻転生を活かした時間軸の広がり(輪廻転生の中でブッダに何度も出会う)から、パラレルワールド的な空間軸の広がり(無限の多世界が存在しその中にブッダがいる世界が多くある)まで、何でもありなところがおもしろい。

以前読んだイスラム教に関する本で、やたら「ポイント」を稼ぐ活動が重視されていることが、宗教的な活動に熱心な要因なのかと思ったのだが、仏教にもそういう要素があるというのも初めて知った。

2017.06.24

「いつも、気づけば神宮に」

軽い気持ちで手に取ったのに、いきなり最初の「かすみ草の系譜」、1992/10/10の甲子園の試合で故大杉氏が広沢選手に乗り移って打ったかのようなホームランの話に泣く。
この試合は土曜でテレビでも見てたし、当時新聞や雑誌もいろいろ読んだけど、レフトスタンドで大杉氏のテーマが演奏されたということは知らなかった。今だったらきっとネットニュースにはなっていただろう。

「背番号《1》の系譜」では、自分と似た体格ということで思い入れのあった青木から10年前にもらった年賀状を、お守り代わりに持ち歩いている若松の話に、また泣く。

「脇役の系譜」ではやはり角!
確かに目立たない選手だったけど、この人はとても記憶に残っている。何か持っている人という気がして、同じ脇役の系譜でも渋井じゃないやろーとは思う。むしろ土橋タイプではないか?
そして驚きだったのが王の一本足打法で有名な荒川コーチが杉浦や八重樫に一本足打法をゴリ押ししていたこと(しかも王と同じパンツ一丁で刀で紙を切るやつもやらされたらしい)。
杉浦はそのおかげでライトに強い打球を打てるようになった、とか。強く引っ張りすぎてライナーが多いイメージが強かったのだが。日本シリーズでの代打サヨナラ満塁ホームランは荒川コーチが打たせたものと言えるのかも。

「国鉄戦士たちの系譜」ではカネやんこと金田正一氏の破天荒ぶりが元チームメイトから語られているのが興味深い。本当にそこまでめちゃくちゃだったとは(笑)

そして、「負けグセの系譜」では何と言っても関根潤三氏!
「一勝二敗の勝者論」という、関根潤三氏がヤクルト監督退任翌年に出版した本。著者は負け越して勝つなんておかしいだろうと思っていたが、年を経てその本当の意味に気づいたので関根潤三氏に会いたくなった、というエピソード。しかし関根潤三氏は「何これ?僕が書いたの?」「バカ言っちゃいけないよ。一勝二敗で勝者であるはずがない」などと言う。完全にギャグ展開に…。

本当におもしろい本だと思うけど、スワローズファン限定で、このおもしろさを共有できる人が周囲にいなくて残念。

2017.06.17

ダニエル・カーネマン 「ファスト&スロー(上)」

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)システム1とシステム2についての説明が中心の前半は間違いなく面白い。
省エネ・高速だけど雑なシステム1と、緻密で高機能だけど、エネルギーを食うし遅いために極力働きたくない怠惰なシステム2。後から示される多種多様なバイアスはほぼシステム1が要因となっている。

システム1は何の努力もせずに印象や感覚を生み出し、この印象や感覚が、システム2の形成する明確な意見や計画的な選択の重要な材料となる。システム1の自動運転が生み出すアイデアのパターンは驚くほど複雑だ。だが、一連の段階を踏み順序立てて考えを練り上げられるのは、スピードの遅いシステム2だけである。システム2は、システム1の自由奔放な衝動や連想を支配したり退けたりすることもできる。



脳はなぜ「心」を作ったのか「私」の謎を解く受動意識仮説 (ちくま文庫)

このシステム1とシステム2の動きは物理的にもよくできていると思うし(こういうトレードオフを補完しあう複数のサブシステムを組み合わせたシステムは実際によくみられる)、右の本を読んで衝撃を受けた、「受動意識仮説」でいう後付けの意識というのはシステム2のことなのかと納得してしまう。

ただ、残念なのは、我々には種々のバイアスがあって、その原因がシステム1とシステム2によって説明できる、ということを証明するための実験が延々と続き、途中でしんどくなってくるところ。なので下巻はギブアップ。また時間を置いてこの話を読みたくなったら読もう。

「もっと頭を使って」というのはシステム2を働かせてということだと気づけば、日常でもその指導方法も工夫ができそう。例えば、とても雑な箇条書きのパワポ。思いつくまま項目を並べただけで、これらを論理的に説明するところまで頭を使わなかったのだろう。こういう場合は逆に文章にさせることでシステム2を働かせるのがいいのかもしれない。


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