書籍・雑誌

2017.07.09

「大乗仏教 こうしてブッダの教えは変容した」

一般教養として、単純な興味から読んでみたのだが、思った以上におもしろかった。

よりハードルを低く、万人ウケする方向へ変容した宗派が、結果として多くの信者を獲得して生き残ってきた様子がよくわかる。

「よりスピーディーに悟りを開ける方向」という表現がツボで、エンターテインメントの世界に通じるものだ。
楽しさを得るまでのコストが低いものが一般には受け入れられ、それが競争の軸になって行く。もともとの教えに含まれていた輪廻転生を活かした時間軸の広がり(輪廻転生の中でブッダに何度も出会う)から、パラレルワールド的な空間軸の広がり(無限の多世界が存在しその中にブッダがいる世界が多くある)まで、何でもありなところがおもしろい。

以前読んだイスラム教に関する本で、やたら「ポイント」を稼ぐ活動が重視されていることが、宗教的な活動に熱心な要因なのかと思ったのだが、仏教にもそういう要素があるというのも初めて知った。

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2017.06.24

「いつも、気づけば神宮に」

軽い気持ちで手に取ったのに、いきなり最初の「かすみ草の系譜」、1992/10/10の甲子園の試合で故大杉氏が広沢選手に乗り移って打ったかのようなホームランの話に泣く。
この試合は土曜でテレビでも見てたし、当時新聞や雑誌もいろいろ読んだけど、レフトスタンドで大杉氏のテーマが演奏されたということは知らなかった。今だったらきっとネットニュースにはなっていただろう。

「背番号《1》の系譜」では、自分と似た体格ということで思い入れのあった青木から10年前にもらった年賀状を、お守り代わりに持ち歩いている若松の話に、また泣く。

「脇役の系譜」ではやはり角!
確かに目立たない選手だったけど、この人はとても記憶に残っている。何か持っている人という気がして、同じ脇役の系譜でも渋井じゃないやろーとは思う。むしろ土橋タイプではないか?
そして驚きだったのが王の一本足打法で有名な荒川コーチが杉浦や八重樫に一本足打法をゴリ押ししていたこと(しかも王と同じパンツ一丁で刀で紙を切るやつもやらされたらしい)。
杉浦はそのおかげでライトに強い打球を打てるようになった、とか。強く引っ張りすぎてライナーが多いイメージが強かったのだが。日本シリーズでの代打サヨナラ満塁ホームランは荒川コーチが打たせたものと言えるのかも。

「国鉄戦士たちの系譜」ではカネやんこと金田正一氏の破天荒ぶりが元チームメイトから語られているのが興味深い。本当にそこまでめちゃくちゃだったとは(笑)

そして、「負けグセの系譜」では何と言っても関根潤三氏!
「一勝二敗の勝者論」という、関根潤三氏がヤクルト監督退任翌年に出版した本。著者は負け越して勝つなんておかしいだろうと思っていたが、年を経てその本当の意味に気づいたので関根潤三氏に会いたくなった、というエピソード。しかし関根潤三氏は「何これ?僕が書いたの?」「バカ言っちゃいけないよ。一勝二敗で勝者であるはずがない」などと言う。完全にギャグ展開に…。

本当におもしろい本だと思うけど、スワローズファン限定で、このおもしろさを共有できる人が周囲にいなくて残念。

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2017.06.17

ダニエル・カーネマン 「ファスト&スロー(上)」

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)システム1とシステム2についての説明が中心の前半は間違いなく面白い。
省エネ・高速だけど雑なシステム1と、緻密で高機能だけど、エネルギーを食うし遅いために極力働きたくない怠惰なシステム2。後から示される多種多様なバイアスはほぼシステム1が要因となっている。

システム1は何の努力もせずに印象や感覚を生み出し、この印象や感覚が、システム2の形成する明確な意見や計画的な選択の重要な材料となる。システム1の自動運転が生み出すアイデアのパターンは驚くほど複雑だ。だが、一連の段階を踏み順序立てて考えを練り上げられるのは、スピードの遅いシステム2だけである。システム2は、システム1の自由奔放な衝動や連想を支配したり退けたりすることもできる。



脳はなぜ「心」を作ったのか「私」の謎を解く受動意識仮説 (ちくま文庫)

このシステム1とシステム2の動きは物理的にもよくできていると思うし(こういうトレードオフを補完しあう複数のサブシステムを組み合わせたシステムは実際によくみられる)、右の本を読んで衝撃を受けた、「受動意識仮説」でいう後付けの意識というのはシステム2のことなのかと納得してしまう。

ただ、残念なのは、我々には種々のバイアスがあって、その原因がシステム1とシステム2によって説明できる、ということを証明するための実験が延々と続き、途中でしんどくなってくるところ。なので下巻はギブアップ。また時間を置いてこの話を読みたくなったら読もう。

「もっと頭を使って」というのはシステム2を働かせてということだと気づけば、日常でもその指導方法も工夫ができそう。例えば、とても雑な箇条書きのパワポ。思いつくまま項目を並べただけで、これらを論理的に説明するところまで頭を使わなかったのだろう。こういう場合は逆に文章にさせることでシステム2を働かせるのがいいのかもしれない。


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2017.05.11

「ハーバード・ビジネス・スクールの投資の授業」

ハーバード・ビジネス・スクールの投資の授業主に株を対象として、一般的には十分に合理的と言われる株式市場の中で、他よりもよい運用成績をあげるための「目利き力」の源泉について書かれた本。

情報の取り方・解読法など当たり前のことから、人間の認知バイアスなどから生じる一物二価の投資機会を見つけたり、市場のプレーヤーのインセンティブを理解してノン・エコノミック・セラーを探し当てたり、という自分はあまり知らなかったことまで体系的に説明してあり参考にはなった。

全体的には広く浅くという感じで、金融工学の部分については「金融工学、こんなに面白い」の方が詳しくておもしろく読める。
また認知バイアスについてもかなりあっさりと書いてあるが、今読んでいる「ファスト&スロー」のようなより専門的な本の方が当然だけど、おもしろい。

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2017.04.29

早川義夫「たましいの場所」

たましいの場所 (ちくま文庫)伝説のバンド、ジャックスを解散後短いソロ活動を経て、音楽活動から離れて書店主になって23年後の1994年に活動を再開した著者。

ジャックスはあまり好きではなかったのだが、活動再開後のソロアルバムを友人が聞いていて、それが心に刺さったのを覚えている。「言う者は知らず、知る者は言わず」は今でも愛聴盤。

やはり独特の感性(陳腐な表現だけど)を持った人なんだなと実感した。
仕事の上でも以下の言葉は心に刻んでおきたいと思った。(このブログは批評なんて大げさなものじゃないので、好き勝手書くだけですが)

「だいたい、批評したがる人は、ものを作らない。ものを作っている人は、人を批評しない。人を批評する暇があったら、自分を批評する。なぜなら、自分を見つめた時に、作品は生まれて来るからだ。人を貶したり、悪口を言ってる間は、ものを作れていない時である。褒めるのは、創作につながり、悪口は、嫉妬から生まれる。」
「本当の批評は、人のことより、自分のことを書く。自分がいったい何者なのかを書く。」


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2017.04.12

「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤

「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤 (講談社現代新書)サイバーパンク大好きな立場からすると、脳はデジタル化だって可能(ROM人格構造物とか)と思いたい。

けれど本書は、意識は脳内の物理的現象だけで説明できるものではなく、身体や環境を含めた「脳の来歴」が重要なのだと主張している。逆さメガネへの適応など、根拠としてあげられている実験はどれも興味深い。

意識の外側の話は、今読んでる「ファスト&スロー」のシステム1とシステム2の話とも整合性があって、この分野は本当におもしろい。

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2017.03.11

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント"HARD THINGS"でも言及されていたアンディ・グローブの「インテル経営の秘密」。読もうと思ったら絶版になっていて残念な思いをしたのだが、新たな形で復刊された!

原著は1995年に書かれたもので、今となっては目新しいことが書いてあるわけではない。
それでも組織をつくって機能させることについては読み応えがある。

自分も含めて日本企業の、定型的な仕事(例えば製造)でない組織のミドル・マネジャーはここが弱いと感じるのだが、その理由は結局のところ人材の流動性の低さなのかなと思う。(採用ももちろん重要だけど、アンディ・グローブでさえギャンブルだと言ってる)

人が仕事をしていないとき、その理由は2つしかない。単にそれができないのか、やろうとしないかのいずれかである。つまり、能力がないか、意欲がないかのいずれかである。どちらかを決めるのに、簡単なメンタル・テストを用いることができる。その仕事に生活がかかっているとすれば、それができるか。答えが「イエス」ということであれば、本人はやる気がないのである。答えが「ノー」であれば、これは能力がないということになる。
まさに自分もこの質問をしないといけない状況にぶち当たることばかりで、能力の問題であれば教育、やる気の問題であれば評価・異動などを通しての働きかけになるかと思うのだが、前者については高度な業務であるほど個人の資質の限界というのもあるし、後者ではミドル・マネジャーが使える手段は相当に限られている。
(徹底した訓練ということで広島カープのことは思い浮かぶけど、プロ野球の世界に身を置けるという時点で相当なモチベーションにはなるので一般的な企業とは比べようがない)

自分なりにここ2年余り、なんとなく組み上がっていた組織のパフォーマンスを上げようと苦闘した結果の結論としては凡庸だけど…(自分自身の能力というのも、もちろんあって、当然もっとうまくやれる人というのは世の中にいるとは思う)。

ところで、アンディ・グローブはハンガリー出身の移民で、本書によると彼からするとアメリカ人でさえ曖昧にして議論を避ける傾向が強いらしい。日本人なんてどうなるのかと思うけど、彼の特異とされたマネージメントスタイルは移民による多様性がもたらすメリットだろう。
本書でもページを割いているミーティングについての教えを裏付けるエピソードが「インテル 世界で最も重要な会社の産業史」に出てくる。

もちろん会議の場で全員が対等と考えるのはかまわないし、誰かがノイスやグローブやムーアに盾突くのもいいだろう。だが会議の終わりにはきちんとした計画や行動プラン、出席者全員の任務をまとめておいたほうがいい。さもなければ大きなツケを払わなければならない。会議を招集したのに議論ばかりで結論が出ないということが続けば、たちまち責任者はアンディ・グローブからの呼び出しという世にも恐ろしい目に遭うことになる。

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2017.01.22

「ハーバードの自分を知る技術」

ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ適当に元気の出ることとかが書いてある本とは一線を画す、キャリアに関する本だった。

一番よかったのは実習(例えば自分が一番仕事で楽しかったことを思い出して、書くとか)を通して、キャリアカウンセリングみたいなのを受けたような気になれる点。
少なくとも自分が本当にやりたいことというのは、整理できたと思えた。

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2016.12.03

「生産性」

生産性「採用基準」はかなりよかったので、その著者の新刊ということで読んでみた。

割と当たり前のことが多い気がした。ホワイトカラーの生産性の必要性を説くのにページを費やし過ぎか。

トップパフォーマーの育成やロールプレイング研修など得るものはあったが、総じてこの著者がわざわざ書く必要はなかったのでは?という内容だった。

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2016.11.20

「深海生物学への招待」

深海生物学への招待チューブワームをはじめとする謎の深海生物を興味本位で読んでみたかっただけが、思った以上に面白かった。

深海の様子や生物の紹介から、チューブワームと共生微生物を経て、太陽食性の食物連鎖とは別のイオウ食性の食物連鎖へと展開。
さらに地球上の最初の生物はイオウ酸化バクテリアの祖先という仮説や、地球外の生物の可能性(我々が目にする生物の常識からすると太陽系内に生物なんて…?となるけど、本書を読むと絶対にいる!という気になる)、深海探査の歴史、各国・各チームの競争など、興味深い話がたくさんあった。

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